はじめに
たとえ、親子間での商業取引が租税回避を目的として行われていないとしても、移転価格税制は適用されるため、企業はいかなる場合でも独立企業原則にそった取引価格の設定を求められることになります。独立企業原則の正確の遵守には、正しい比較可能性分析を行うことは欠かせず、ひいては、移転価格算定手法の適用をどう行うかが移転価格税制の大事なステップになります。
比較可能性分析と移転価格算定手法
税務当局は移転価格税制を適用して、企業に対して追加で課税を要求することがあります。その場合、当局は関連者取引と第三者取引を比較していますが、ビジネスにおいて全く同じ取引はない以上、条件を調整する必要があります。そこで、「比較可能性」とや移転価格算定手法というアプローチが取り入れられて、合理的な価格の基準を設けることになります。
多国籍企業グループ内での取引は、各企業によって全く異なります。例えば、海外子会社が製造している部品の機能が子会社によって違ったり、物流拠点の影響で原価が変わることもあると思います。
よって、まず関連者取引と第三者取引の条件を明確にしないことには、比較しようがありません。そこで、各取引において様々な項目を特定することで「比較可能性」を明確にしていきます。
例:企業グループ内で行われた取引のチェックポイント
取引の契約条件
取引において、それぞれの企業が持っている機能(機能分析)
売買する資産やサービスの特徴
マーケットの経済状況
それぞれの企業の事業戦略
例えば、上記のポイントをチェックして比較する取引そのものをクリアにしていきます。
比較可能性分析をふまえ、比較するにふさわしい類似した第三者取引が明らかになりました。
次に、比較する企業が持つ類似性に応じて移転価格算定手法を適用します。この算定手法によって、国外関連者との取引が「独立企業間と同じか」を明らかにしていきます。
ベトナムでは、現在5つの方法が政令に規定されています。それぞれ、何をチェックするかが異なり、分析結果を踏まえていずれかの方法を選ぶことになります。
①取引価格自体が独立企業間価格と同じかチェックする。
②~ ④ 原価に上乗せする利益(マージン)や、第三者に販売する際の利益率によってチェックする。
⑤ 利益の合計を役割に応じた基準をもうけて、分割する方法
移転価格算定手法 |
算式 |
①独立価格比準法 |
比較可能な実際の取引価格と比較 |
②再販売価格比準法 |
売上総利益率÷売上高 |
③原価基準法 |
売上総利益率÷売上原価 |
④取引単位営業利益率法 |
売上高営業利益率:営業利益÷売上高 |
⑤利益分割法 |
関連者同士の利益の合計を、一定の基準で分割 |
おわりに
ベトナム税務調査では、業界水準や他の企業より高い利益率で計算した移転価格を要求してくることがあります。当局に対して正確に抗弁できるよう、文書整備だけでなく、分析結果の理解をすることも大切になります。