はじめに
ベトナム税法は、基本法規であるLawを起点として、詳細規定Decree、実務指針Circular、特別措置であるDecisionとOfficial letterにより構成されています。ベトナム移転価格税制を定めるDecree 20では、国外関連者の定義、文書作成要件等、日本と異なる要件もある事あるため、実務において注意が必要です。
ベトナム移転価格税制の概要
ベトナム初の移転価格税制の基本ガイダンス(Circular 117)は2006年に発行され、現在に至るまで幾つかの改訂を経て運用されています。
2017年2月24日に施行された細心の政令Decree 20では、移転価格税制に該当する会社、移転価格文書整備の要件、関連者の定義など具体的な実務指針を公表しています。
該当する会社
関連者間取引を行う全ての納税者が該当します。簡単に言えば、親会社と取引のあるベトナム法人は移転価格税制の対象です。しかし、そもそも取引相手が「関連者」の定義に該当するかどうか、以下の要件に影響されます。
関連者の要件
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政令Decree 20 |
関係性について |
a)直接的もしくは間接的に、経営に関与している、他社の持ち分へ投資を行い支配を行っている。 |
持分条件 |
a)他社の25%以上の株式を保有 |
資金援助 |
借入金額が資本金の25%以上、及び、中長期負債の50%以上に相当。 |
役員派遣 |
過半数50%以上の取締役等役員の派遣、または経営・財務活動に対し決定権を有する役員を派遣する場合 |
親族関係 |
人事・財務・経営活動を支配しているか、影響を与える個人の親族である場合 |
恒久的施設 |
親会社とその国内外の恒久的施設間で取引がある場合 |
移転価格文書の作成に関しては、免除規定も定められています。
免除規定
①売上高500億VND未満、且つ、関連者間取引高300億VND未満の企業
②事業内容が単純、無形資産の開発・使用による収益費用計上がない、売上高が2000億VND以下、且つ、EBIT/売上高の比率が、
卸売業で5%以上、製造業で10%以上、加工業であれば15%以上である場合
③事前確認制度(APA:Advance Pricing Agreement)に基づき合意書を提出し、年次報告を行っている場合。
移転価格文書とは
ベトナム移転価格税制おいて、会社が整備しなければならない書類は2種類あります。一つは、①確定申告時に同時に提出する定形の申告書類。もう一つは、②移転価格文書、つまり取引価格の詳細な分析資料です。
①申告書類
Form 01 関連者間取引に関する開示申告書類
Form 02 ローカルファイルに関する情報の開示書類
Form 03 マスターファイルに関する情報の開示書類
Form 04 国別報告書に関する開示書類(※)
(※ 親会社及びその所在国で、作成義務がある会社のみ)
②移転価格文書
ローカルファイル ローカル納税者(現地法人)の関連取引に関する情報
マスターファイル グループ全体の事業活動に関する情報
国別報告書 企業グループの所在地、収益金額、納税額等の情報(※)
(※ 親会社及びその所在国で、作成義務がある会社のみ)
申告書類の中には、組織構成図や事業戦略など、あらかじめ会社が作成していなければならない資料が含まれます。しかし、あくまで整備していることを自主申告する目的のため、毎年具体的な書類を提出する必要はありません。
とはいうものの、移転価格文書と同じく税務調査が入った際に慌てて準備することがないよう、各資料を確認し事前に準備しておくことをお勧めします。