移転価格税制⑤ 有形固定資産

移転価格税制⑤ 有形固定資産

移転価格税制⑤ 有形固定資産

はじめに

ベトナムに子会社を設立する際、親会社から機械装置の導入を行うケースが多くあります。親会社で使用していた中古機械を子会社へ販売する他、いずれかの会社が新品で購入する方法など、販売形態は様々です。中には、子会社で使用した機械を親会社に売却しリースバックするケース等、関連者との有形固定資産取引は多岐に及びます。そのような有形固定資産を取引する際にベトナムで気を付けなければならない移転価格税制を説明します。

 

1. 固定資産取引とは

一般的に固定資産とは、1年以上使用する事業用の資産をいい、販売目的で保有する棚卸資産等とは明確に区分されています。

ベトナム外国法人が行う有形固定資産取引は、親会社から子会社への機械装置・設備の販売にが多いのではないかと思います。棚卸資産取引と比べ、取引数が多くないことからあまり注意されていないものの、販売価格が大きくなることがあるので、確認が必要です。

 

 

2. 固定資産の移転価格税制

有形固定資産の国外関連者との取引は、ベトナム移転価格税制が適用される旨が政令に定められています。

有形固定資産は減価償却が必要なため、経過年度によって購入価額と簿価が異なることがあります。移転価格税制では、簿価と大きく異なる販売価額での取引は、チェック対象となる可能性があるため注意が必要です。

ベトナムでは、販売価額について政令で定められており、事前に証憑・資料用意しておく必要についても言及されています。具体的には、移転価格に関する政令Decree 20では、機械及び装置を外国の関連者と取引するケースが提示されています。

 

 

3. 機械及び装置の販売価格について

ベトナム法人が国外関連者と機械装置の売買取引を行った際、以下の価格での取引が求められています。

“国外関連者から機械装置を購入する納税者は、購入時の購入価額が、独立企業間原則に則った価額であることを証明できる記録・証憑を提供しなければならない。新品の機械装置を購入した場合の移転価格とは、国外関連者が第三者から購入した時のインボイス(請求書)に記載された価額である。一方、中古の機械装置を購入した場合は、販売価格と、購入日までの経過年度の償却費を差し引いた簿価と比較できる証憑を整備しなければならない。” (参照:Decree 20/2017/ND-CP Article 7 Clause 1 c))

つまり、国外関連者から購入した機械装置の状態によって、適用される移転価格が決まっており、それに応じて証憑類も整備するように、という旨が記載されています。

なお、国外関連者から新品の機械装置を購入した場合、国外関連者における同機械装置の購入価額の証憑が必要になるなど、ベトナム法人だけでは資料が揃わないことがあるため注意が必要です。

 

国外関連者から購入した機械装置の状態

必要資料

① 新品

 

A) 当該機械装置は国外関連者が第三者から購入したものである場合

国外関連者における購入価額が分かる証憑(インボイス)

B) 当該機械装置は国外関連者が製造したものである場合

機械の製造原価が分かる資料

② 中古

国外関連者における販売時の簿価が分かる資料(償却資産台帳等)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(※)税務調査が入った際、中古資産に関しては新品同様、当初関連者が第三者より購入した際の購入価額が分かる資料を求められるケースも考えられます。例えば、購入価額により、ベトナムにおける償却費が高くならない様、購入時点での資産の再評価が要求されるケース等が該当します。従って、いずれのケースにせよ文書作成の際に、正確な取引価格の分析を行う事をおすすめします。

 

移転価格文書の整備はもちろん大事ですが、それ以前に、準備すべき証憑や各種必要資料がちゃんと揃っているのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。ご質問やご要望等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。