はじめに
ベトナムに子会社を設立する際、親会社が設立や経営支援を行った対価として、ロイヤルティやコンサルティングフィー等の名目で対価を受け取る事があります。その際、海外子会社が、本国に対してロイヤルティを支払う場合、法人税や間接税のみならず、移転価格税制にまで気を付けなければなりません。一般的なロイヤルティの定義、国外関連者がロイヤルティを支払ったときの各種課税や、移転価格税制におけるポイントを説明します。
1. ロイヤルティとは
親会社に対して、ロイヤルティ、コミッション、指導料等何等かの対価を支払っている場合、支払っている費用に応じて、分類が異なります。
“無形資産の移転または使用の対価として受領される全ての種類の支払金”は、ロイヤルティとなります。無形資産とは、「特許権や著作権等知的財産権、ノウハウや技術を要する生産工程等」です。例えば、ベトナム子会社が現地で製造を行う場合、0からビジネスをスタートするのではなく、親会社から機械装置の導入や生産工程、ノウハウの提供を受けて事業活動を行うとみなされます。結果として、上記の名目で支払っている対価、使用料は、ロイヤルティ費用となります。
一方で、技術指導等の実際に行われたサービス提供に対して対価を支払う場合は、役務提供の対価としてロイヤルティと区分する必要があります。
上記の区分は、企業によっては分けていないことも多く、取扱いもかなり曖昧です。しかしベトナムにおいて、ロイヤルティと役務提供の対価は、課税の取扱いが異なることがあるため、注意が必要です。
2. ロイヤルティ・役務提供に関する税金
ベトナムから国外関連者へロイヤルティの支払いを行った場合:
「VAT 非課税CIT10%」の課税が行われます。FCTとしてCITの10%というとややこしいですが、FCTはいわゆる源泉税です。外国法人がベトナムで行ったサービスや資産譲渡に対する支払に課税されるため、日本法人に対する法人税10%が外国契約者税として課税対象という形になります。
技術支援等、役務提供の対価として支払を行った場合:
「役務提供取引」として、FCTの一般サービスの分類(VAT5% / CIT 5%)の課税が適用されることがあります。
3. ロイヤルティ移転価格税制
国外関連者に対して、ロイヤルティ及び、サービス料の支払いを行う場合は移転価格税制が適用されます。
すなわち、いずれにおいても独立企業間価格で取引が求められ、移転価格が否認された場合課税が生じる可能性があります。
役務提供の対価を計算する際、日本では、条件を満たせば、役務提供に係る総原価の額を移転価格として使用することが認められています(移転価格事務運営要領3-10)。
一方ベトナムでは、役務提供対価に関する、独立企業間価格を算定する手法や明確な基準は示されていません。また、ロイヤルティの支払に関しても、定められた算出方法はありません。従って税務調査の際は、ロイヤルティ料率及び計算を規定した社内文書を証憑として残しておき、ロイヤルティ料率の合理性を説明することになります。